契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 それどころかあらかじめ用意していたと思しき瀬名のクレジットカードを渡されて生活に必要なものは食費を含めてここから出すようにと言われたのだ。
 とんでもないと渚は慌てて固辞をしたが、瀬名は譲らなかった。

『期間限定でもなんでも、君は私の妻になったんだ。妻から生活費をもらうわけにはいかない』

 それでもそういうわけにはいかないと渚はなおも食い下がった。
 父にバレないためとはいえ、職場からも学校からも近いこんな豪華なマンションに間借りさせてもらうだけでも申し訳ないのに、生活費まで出してもらうなんて。
 その渚を瀬名は説き伏せた。

『君はこれから仕事をしながら学校へ行くという過酷な生活が始まるんだ。余計なことは気にせずに資格試験のことだけ考えないと途中で挫折するぞ。私に申し訳ないと思うなら、最短で受かるんだな』

 まるで学校の先生のようなことを言う瀬名に渚はようやく納得し、しぶしぶ頷いたのだ。それを見届けてから瀬名は夕方のニュース番組に出る予定があると言って出て行った。
 戻りが何時か聞きそびれてしまったが、渚はとりあえず好きに使っていいと言われた夢のように広くて綺麗なキッチンで、夕食を作っている。
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