契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 まぁ、俺ひとりが冷やかされるくらいは仕方がないか。
 結婚すると決めた時からこれくらいのことはある程度予想できたのだから。
 とはいえ渚の方は、自分が周りにどのような目で見られているのかなどは、まったく想像もしていないのだろう。
 いつものように淡々と仕事をこなしている。
 本当にアンバランスな子だなというのが和臣の率直な感想だった。
 彼女が就職してから見合いをするまでの二年間、和臣の彼女に対する印象は、真面目。
 仕事自体はけして早いわけではないけれど、きちんと指示通りに正確に仕上げてくれる信頼できる事務員のひとりだった。余計な私語もしないから、近ごろでは彼女を選んで仕事を頼むことも増えていたくらいだった。
 事務所の弁護士たちのアプローチにまったくなびかないその姿には、きっとそんな男の魂胆などは見抜いていて、でもその気はないから、適当にあしらっているのだろうと思っていたけれど……。
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