契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「あぁ、そうなんだ。了解」

 答えるとそっけなく切られる内線に、和臣は苦笑しながら受話器を置く。
 このギャップ。
 どこか危うさをはらんだ、このアンバランスさがおもしろいと和臣は思う。少なくとも今までの和臣の人生で初めて会うタイプであることは間違いない。
 誰が想像できるだろう。
 事務所では殆どの時間を無表情で、淡々と過ごしている彼女が、本当はあんなに表情豊かで純粋な子だと。
 そのまで考えて、また口元が緩みそうになってしまい和臣はそこを手で覆う。だが頭に同居を始めたあの日の渚が浮かぶのは、止められなかった。
 あの日、

『瀬名先生は親切だ』

と嬉しそうに姉に報告している渚を和臣は素直にかわいらしいと思った。
 ちょっと箱入り娘がすぎるなとは思ったものの、あの厳しい父親にずっと守られていたのなら仕方がないだろう。
< 119 / 286 >

この作品をシェア

pagetop