契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 顧問先である三好コーポレーションとの面談は定期的にあるものだから、緊急性はないはずで、無理をいう相手先でもない。
 本来ならば、彼女のところで別日に調整の上、報告をしてくれればいい話だ。
 和臣は心の中でため息をついて、

「わかった。私が電話に出る」

と言った。
 先方と話をしてあっさりと別の日に決めて受話器を置くと、和臣はまたため息をついた。
 なにが気に食わないのか、このようなことは和臣と渚が結婚してからたびたびあった。今回はおそらく、和臣と渚の夏季休暇がぴたりと重なっていることが気に食わないのだろう。
 裁判所には決まった夏季休暇はないから、佐々木総合法律事務所では毎年皆、少しずつずらして休暇を取る。
 和臣自身は特に時期にこだわりはないから、例年なら皆の予定が決まった後、最後に空いているところへ入れることが多かった。
 だが今年は希望を出して、渚と合わせることにしたのだ。
 その休みにふたりは、和臣の実家に帰ることになっている。
 本当の夫婦ではないふたりがそうすることになったきっかけは、和臣の実家から届いた荷物だった。
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