契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 母親が微笑んだ。

「そう……。和臣が大学生の頃、お父さんが倒れて、うちが大変だった時期があるの。やれる人がやれることをやらなくちゃいけなかったから、和臣もご飯を作ってくれたわ。だから田舎の男でもキッチンに立つことに抵抗はないはずよ。東京では忙しいから自炊はしないなんて言ってるけど、たくさんやらせてね。渚ちゃん」

 渚が少し困ったように微笑んで、恥ずかしそうに頷いた。
 みゆきがビールを飲み干してはぁーと感慨深げにため息をついた。

「それにしても、和臣君のお嫁さんが渚ちゃんみたいないい子でよかった~! ねえお母さん?」

 母親がふふふと笑って頷いた。

「そうね」

「和臣君、テレビで大人気でさーアナウンサーと付き合ってるなんて噂もあったから、ものすごく派手な人が来たらどうしようって実は私ビクビクしてたんだ。でも渚ちゃんなら大丈夫。和臣君もなかなか見る目あるじゃん!」

 みゆきは渚を見てにっこりとした。

「忙しいとは思うけど、これからちょくちょく来てよ」

 みゆきの言葉に、渚は一瞬視線を彷徨わせる。けれどすぐに笑みを浮かべて、ゆっくりと頷いた。
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