契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
渚の恋心
 土曜日の夕方、渚はキッチンで味噌汁を作りながら、都心の街に沈む夕日を眺めている。もう随分日が短くなって、秋も深まりつつあるこの日、和臣の実家から荷物が届いた。
 今年の新米である。
 食の仕事を目指す渚にとっては、"新米"というだけでも心が躍るものだが、夏の帰省で実際に作っている現場を見たのだから尚更だった。
 おいしいお米はもうそれだけでご馳走だと渚は思う。
 だから今夜はご飯に合う梅干しや昆布などを揃えてシンプルにおにぎりにしようかと思ったのだ。
 ちょうど姉の千秋の家から、いただきものの高級のりをもらってきたところだ。
 これに豚汁でもあれば完璧だろう。
 和臣は今、ちょうどニュース番組に出ているため家にはいない。だが出かけに、今日はニュース番組のあとは家に帰ってくると言っていた。
 だから渚は、彼に炊き立ての新米を食べてもらおうと思ったのだ。
 でもさっきいそいそと炊飯器をセットしたところで、無情にも携帯が鳴った。
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