契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
和解
 人通りの多い商店街を渚はとぼとぼと歩いている。
 頭の中を愛美の言葉がぐるぐると回っていた。

"所長の娘でなかったら、瀬名先生は絶対にあんたとは結婚したなかった"

"今も迷惑をかけている"

 突きつけられた真実たちがただ胸に痛かった。
 もう潮時だと渚は思う。
 彼の好意に甘えて、ここまでなんとかやってきたけれど、本当にもうこれ以上は迷惑をかけられない。
 たとえ行くあてがなくとも、家を出なくては。
 そんなことを思いながら、ただひたすら渚は歩き続ける。
 その時。

「あら、渚ちゃんじゃない」

 声をかけられて振り返ると、見知った顔のおばさんがニコニコしてそこにいた。

「あ、お久しぶりです」

 商店街にある花屋のおばさんだった。
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