契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
告白
 展望台から眺めるような煌びやかな夜景、その中に浮かぶ和臣の背中を渚は不思議な気持ちで見つめている。
 ふたりで暮らすマンションのリビングである。
 ようやくゆっくり話ができる状況になった。それなのに和臣は電気もつけずに渚に背を向けて、黙り込んだままである。
 一方で渚の方はというと、これまたどうすればいいかがまったくわからないでその場に立ちつくしていた。
 頭の中にあるのはさっきの和臣の言葉だった。
 週刊誌の取材に対して答えたことはすべて本当のことだと言った彼の……。
 到底信じられる話ではない。ありえないと思いながらも、渚の中の彼に対する恋心がどきどきと張り裂けんばかりに鳴って彼の言葉を待っている。
 しばらくして、和臣がゆっくり振り返る。その彼が今まで見たどんな彼とも違っているような気がして、渚は小さく息を呑んだ。
 いつもの彼の綺麗な瞳、でもその中に、熱いなにかが浮かんでいる。まるで狩りをする前の肉食獣のようなその視線が絶対に逃がさないとでもいうかのように渚を捉えている。

「渚」
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