契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
新たな門出
 真っ白な雪の平原が太陽の光に反射してキラキラと輝いている。澄み渡るような空気に白い息を吐いて、渚はその光景に心躍らせた。

「雲の上みたいですね! 和臣さん」

 隣の和臣を見上げると、彼は優しく微笑んで頷いた。

「見渡す限り新雪だな」

 大晦日を渚の家で過ごした後、年が明けてからふたりは和臣の実家へやってきた。
 もう二度と来ることはないと諦めていた雪化粧の屋敷で、温かい家族はふたりを両手を広げて歓迎してくれた。
 夏に来た時は、仮の居場所だと自分に言い聞かせながら、それでも憧れずにはいられなかったこの場所に本当の家族として戻って来られた。少し土の香りがする玄関をくぐった瞬間、胸に熱いものが込み上げて、渚は思わず涙ぐんでしまった。
 そしてそのままその夜は和臣の母お手製のおせち料理を食べながら皆で再会を喜んだ。
 一夜明けて、少し早起きをしたふたりは、誰にも踏み荒らされていない新雪の中を、散策している。

「和臣さん! あっち行ってみましょう! 私、一度でいいから雪にダイブして自分の人型を作ってみたかったんです! ほら早く!」

 渚は彼の手を離して、雪の中へ飛び込もうとする。
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