契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 どうしたもこうしたもない、と渚は思う。どうして彼がここにいるのだろう。あたりまえのように渚の向かいのソファに座り、あたりまえにコーヒーを頼んで。

「……音川先生は、遅れて来られるのですか?」

 渚はなにが起こっているのかいまいち整理できていない頭のまま、とりあえず瀬名に尋ねる。
 彼がここにいる理由があるとすれば、音川に不都合があって後輩の瀬名を走らせたのかと思ったからだ。
 だがその問いかけに今度は瀬名が驚いたように眉を寄せた。

「音川さん?」

 渚はゆっくりと頷いた。

「音川先生が来られるんですよね」

 その言葉に瀬名はしばらく逡巡していたが、やがて渚を真っ直ぐに見て、確認するようにゆっくりと言った。

「音川さんは、たぶん来ないよ。……今日は関係のない人だから。佐々木先生からは、私と君のふたりで会うようにと言われたんだが」

「え!?」
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