契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 だが今そうしなかったのは、龍太郎の話の内容が、おそらくはプライベートに関すること……渚についてだと思ったからだ。
 見合いの後、結果を知らせるために和臣は龍太郎に電話をかけた。だが龍太郎は出なかった。
 おそらくは研修会の途中であったのだろう、その留守番電話に和臣は短く『渚さんと結婚させていただきます』とだけ入れておいた。
 その後折り返しがないなとは思っていたけれどこうやって急いで帰京したということは、和臣のメッセージに対する返事が電話でする内容ではないと龍太郎が判断したということなのだろう。

「大丈夫ですよ。どうぞ、お座り下さい」

 和臣は簡易の応接コーナーに龍太郎を促した。

「今お茶を入れてきます」

 自分は事務室に併設されている給湯室へ行こうと再びドアに手をかける。
 だがそれを、龍太郎がコートを脱ぎながら止めた。

「いや、いい。なにもいらん」

 そしてまだ立ったままの和臣に向かって、問いかけた。
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