契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 龍太郎だ。
 瀬名は今開いているパソコンの画面を最小化してから、立ち上がる。そして大股に入り口へ向かいドアを開けると、龍太郎がコート姿で立っていた。

「先生、お戻りだったんですか」

 和臣は少し驚いて言う。
 龍太郎は先週末から明日までを、地方で過ごしているはずだった。研修会の講師として招かれていたからだ。日程自体は今日の夕方で終了だが、今夜は向こうに泊まり明日朝午前中に戻る予定と聞いていたのに。
 急な帰京、しかもコートを着たままだということは、自分の部屋に戻らずにそのまま和臣の部屋に来たということになる。

「少し話をしたいんだが」

 龍太郎の言葉に、和臣は頷いて彼を自室へ招き入れた。普段なら打ち合わせは相談室でやることが多い。
< 81 / 286 >

この作品をシェア

pagetop