HONEYBEE(1)~アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚~
私は久世さんの目の前に、智咲先輩が彼の隣に腰を下ろした。

「何飲む?」

「私はウーロン茶で」

「私もウーロンでいいわ」

「そっ」

久世さんはブザーを押し、ウェイターを呼んだ。

「母の二の舞って…どう言うコトか?説明して貰おうかしら?」

「・・・そうだな…まぁ、俺の特殊な生い立ちも関係してるけど…他の連中には話さないでくれよ」
彼は他人に口外はしないでくれと頼んだ。

「俺の母はとある大手企業の社長の愛人だったんだ。社長には溺愛した奥さんが居た。でも、奥さんはカラダが弱く、一人息子を産んで、間もなく亡くなった。その奥さんに母は瓜二つだったんだ。社長は俺の母を愛した奥さんの身代わりとしてそばに置いた。いつも、亡くなった奥さんの姿を通して、見つめられる母にとってはそれは苦痛でしかなかった。自分を見て欲しいと願っていた母は次第に精神的に追い詰められ、自殺した。
高木先生は亡くなったお姉さんの許婚。母と同じ立場にある。
何れ、そんな苦しい想いをするのは目に見えている。だから、俺が救ってやろうと思ったんだよ」

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