あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~
「待って」


えっ?


呼び止める声に思わず振り返る。


とても高級感溢れるマンションの前に、その声の主は立っていた。


タイト目なスーツをビシッと着こなして髪型もオシャレで…


あまりにも素敵なその人は、眩しいばかりのオーラを放っていた。


「あっ、あなたは…榊社長」


思わず名前を言ってしまった。


「俺の名前…?」


少し渋めでセクシーな声。


お店でも聞いてはいたけど、今、2人きりで改めて聞くと何だかドキドキする。


「あ、すみません。昨日、秘書さんが来られて名刺を頂きました。なので、お名前は『杏』のみんなが知ってます」


「前田君か…」


あの優しそうで礼儀正しい秘書さんの名前だ。


「連絡が取れないって困っておられましたよ」


「…そうか。君、名前は?」


えっ…


いきなり名前を聞かれて驚いた。


私の名前なんか聞いてどうするの?


普通の接客以外で話したの初めてだし、名前なんか言ったって、どうせすぐに忘れるくせに…
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