あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~
この心理状態が何を表すのか、自分でもよくわからないけど…


「すみません…やっぱりそんな軽々しく呼べません」


「簡単なことだ。ゆうせい…ひらがな4文字。幼稚園児でも出来る、言ってみて」


「ゆ、ゆう…」


って、うわ、危うく言ってしまいそうになった。


「そのまま続けて」


「む、無理です」


「ああ、じれったい。そんなに焦らすのが好きなのか、雫は」


「ち、違います! 焦らしてるとかじゃないです」


「なら、言えるだろ?」


「わ、わかりました。言います、言いますよ。ただ4文字のひらがなを言えばいいんですもんね」


半分ヤケになってる私。


そんな私を見て、うなづいてニコッと笑う榊社長。


「ゆう…せい…さん」


「まあ、さんは余計だけど許してやる。これからは絶対にそうやって呼んで」


嘘みたい。


かなり強引過ぎない?


でも、私、この人のペースにどんどん引き込まれてしまってる。


まさか榊社長を『祐誠さん』と呼ぶことになるなんて思いもしなかった。


しかも、自宅にパンの配達。


おまけにジムにまで誘われて…


これはいったいどういう事?


夢じゃないんだよね、このやり取り。


「じゃあ、本当に失礼します。ご馳走様でした、ありがとうございました」


「気をつけて、雫。また必ず連絡する」


祐…誠さんにそう言われ、私は半分逃げるように部屋を出た。
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