いやな、やつ
刹那だった
ブレスレットが光る左手を引かれて
整った顔がすぐそこに迫り
───強引に、唇を奪われた。
そして、流れるように耳元に寄せられた唇が掠れた声で
『──好きだ』
熱く、囁いた。
見たこともないくらい顔を真っ赤にしたりんご倉持は私を離すと
「春には、やらねぇから」
揺れ動く瞳で私を一瞥し
そのまま駆けて行った。
ポカンと、立ち尽くす私。
『…世奈ばっか、可愛いって思ってたとか』
じわじわと
真意を聞くことのできなかった倉持の言葉が、ゆっくりと脳に侵食する。
突然のキスに驚いて感覚の無くなっていた私は、また熱く体を火照らせたのだった。