おたのしみ便
封筒の、糊付けされた部分から手でばりばりと開けようとしていると、母が笑いながら制した。
(はさみ)、使うのよ」
封筒の短辺を、まっすぐに細く、切る。中身まで切ってしまわないように注意しながら。
ひとつ、大人の仕草を身につけた気がした。

まっすぐに切った封筒の中身を、コクヨの学習机の上にあけた。
切手の貼られた封筒より一回り小さな分厚い封筒が、ごろんと滑り出てきた。
罫線(けいせん)の入ったノートを破って作られた手製の封筒で、鏡子の字で「おたのしみぶくろ」と書かれている。
何かのキャラクターのシールだけで封されたそれを開けると、中にはシールやステッカー、切り離されたメモ帳や付箋の類いがぎっしりと詰まっていた。

「わ……!」
そのボリューム、その多様さに、わたしは小さく息を飲む。
そのほとんどが少女漫画誌の付録であることは、後から知った。
まだ漫画を買ってもらう文化のなかったわたしに、カラフルでかわいいそれらはあまりに刺激的で、魅力的だった。
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