おたのしみ便
便箋そのものは、封筒の裏側に貼りつくように入っていた。わたしはそれを、指先で丁寧に剥がして引っぱり出した。

「はなちゃん おげんきですか クラスがちがってもともだちでいようね。」

「ち」の字の下半分を曲げる方向が反対だったけれど、嬉しかった。
鏡子の熱い友情をたしかに受け取った気がした。

母にねだって、自分も月刊の少女漫画誌を買ってもらうことになった。
ただし、鏡子が買っているのとは違うものを。
「恋愛とかなんとか、そういうのはまだ早いと思うのよね……」
書店のレジで母はぶつぶつ言っていたが、わたしはかつて覚えたことのない興奮に包まれていた。

家に帰り、本誌はそっちのけで、わたしは付録を取り出した。
レターセットに、きらきら光るシール。メモパッドに、組み立てて使う、紙製のペンケース。
まだ名前も知らない少女のキャラクターたちが印刷されたそれらは、6歳の胸を存分にときめかせた。
これでわたしも、鏡子に「おたのしみぶくろ」を作ってあげられる。
喜びではちきれそうになった。
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