メガネをはずした、だけなのに

「桜井くん……桜井賢斗くんがどうしたの……」


 思わずキツイ口調で言ってしまった。


「綿貫くんは、彼から何か聞いてるだろうか」


「えっ……」


 もしかしたら、宿泊研修を欠席することかな。

 一年生全体の会議で使う研修参加者の名簿や書類は、すでにある。

 隣のクラスでも、欠席になってたら気になるよね。


「理由は知らないけど、賢斗くんは宿泊研修を欠席するみたい。」


「なるほど、理由は知らない……か……」


「うん」


「桜井くんは優しいのか残酷なのか、悲しむ綿貫くんは見たくないが、僕ができることは頑張ってみるつもりだ」


 優しくて残酷?私が悲しむの?相葉くんが頑張る?

 賢斗くんが宿泊研修を欠席する理由と、何の関係があるんだろう。


「相葉くんの話が、ちょっと理解できないんんですけど……」


 廊下に立つ私は、真剣な眼差しで聞いてみた。

 両手をポケットの中に入れた相葉くんは、何回も頷いた後で私に背を向ける。


「だいたいの事情は把握した。なるほど、彼は罪な男だ……」


「それって、どういうこと?」



< 111 / 184 >

この作品をシェア

pagetop