メガネをはずした、だけなのに

「なにか言いたいことでもあるの?」


 ちょっと不機嫌な表情で、私を睨みつけてくる。


「……橋本さんが弾く革命のエチュード、すごく心に響きました」


 私がそう言うと、彼女さんはキョトンとした顔で目をパチパチ見開いてる。


「うれしいこと言ってくれるじゃない!心に響いた、最高の誉め言葉よ!」


 なぜか、私の肩を平手でバシバシたたく彼女さん。

 そして、何も言わずに立ち去っていった。


 前みたいに、色々と文句を言ってくるのかと思ったけど、拍子抜けする。

 素直に負けを認めてるようだけど、私がかけた言葉で喜んでくれたみたい。


 怖い態度と言動で圧力をかけてくるけど、心はピアニストなんだね。

 あれだけの演奏ができるという事は、人目に付かない所で練習を積み重ねてるからだよ。


 きっと、これからも賢斗くんをライバルだと思って頑張るよね。

 大きく成長した神童は、三年の空白期間があっても凄かった。



 そんなふうに、周りから言われてるよ……



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