LIONの許婚
「桜祐様、着替えましょう。
歯磨きはすみましたか?」

「まだ」
桜祐はぶっきらぼうに答える

「わかりました。
はい、どうぞニッコリ」
悠里は可愛らしい顔をして歯ブラシ
を桜祐に渡したが
やる気が起きない様子

暫く様子を見ながらやる気を観察
しかし時間は過ぎるばかり
悠里も仕事がある。

「桜祐様(´○`*)あ〜んして」
桜祐は悠里につられて
あーん‼
悠里はシャカシャカシャカ

「いいですか、歯磨きは
音楽を聴きながらとか20分くらい
よ━━━━く磨きますよ。
虫歯は入れ歯への道標なんですから」

桜祐は大人しく悠里の言う事を聞く。
でも歯ブラシは手にもたない。

朝、桜祐の様子を見に来た田中は
部屋に入るのを戸惑っていたが
桜祐の甘えっぷりに
はぁ
呆れてしまっていた。
「ま、いいか‼」
と、呆れながらもスルー

「悠里様そろそろ、お仕事の
お時間では?」

チッと、舌打ちが聞こえそうな
顔をして桜祐は、田中秘書を見る。

悠里は思い出した様に
「あ、ああっそうだった。
田中さんあと、お願いしても
いいですか?」


「はい。
主従医の先生も見える時間
ですし、お任せください。」

桜祐をチラチラ気にしつつ
「また夕方きますね。」

桜祐は気のない振りして頷いた。
悠里はバタバタと、バックを
持って病室を後にした。


相変わらずボーっとしている
桜祐に

「社長、もういいですよ
な━━━んですか、あの甘えっぷり
歯磨きくらいご自分でされては
いかがです?」
と、歯ブラシをズイーッと、桜祐の
前にだす。


「だってオレ、病気だしっ‼」


「そうですか!私がやってあげますよ。
はい(´○`*)あ〜んしてください。」


「いや、気持ちわりぃ」

「病気じゃなくて、病気のフリ
でしょうが‼」

田中秘書は、

「私も気持ち悪かったですよ。」

そうあの日小澤史郎が尋ねてきた日
暴れる桜祐を止めたのは
田中一晃だった。


「社長、落ち着いてください
社長が落ち着かないと話が
出来ません。」

暴れ回る桜祐を言葉で押さえつけた。


「うわ━━━━━━ドンドン🤛
何の話だよ今更何が変わるんだ
悠里と、小澤史郎は今日、今日‼」


「大丈夫です。
真壁と、私で悠里様をお迎えに
行きます。

会長にも納得させるには
この手しかありません。」

ハアハアハアハア

田中は考えた筋書きを桜祐に
話した。

もし悠里様がどこかへ行かれるかも
と、思い、探偵をつけてあります。
どうか落ち着いて行動して
ください。

あと一人雪乃様にもお願いして
置きました。

雪乃様のお友達のお医者様にも
協力して頂くように
お願いしてあります。

私を信じて、お待ちください。


それを聞いた桜祐はやっと自分を
取り戻す事が出来た。

「たのむ、一晃」


「お任せください。」



はい、暴れていいですよ
1日1回は暴れてくださいね。


「・・・わか・・った。」

ニッコリと、笑う田中秘書に桜祐は
安心したのか疲れ果てたのか
そのまま座り込み、ぐっすりと
眠ってしまっていた

田中が計画したように桜祐は
1日1回は暴れて怪我をする事も
あり血を見た家政婦が自殺未遂を
したのだと噂がながれていた。

桜祐の病気は口の硬い家政婦
しか分からないように
別荘に移動、
噂はあくまでも噂となり
あやふやなままだった。


そして田中は、悠里の居場所を
見つけた、偶然とは異なもの
そこは何と田中の
実家の病院だったのだ

病院に馴染めず田中はやりたい事
があると次男に家督譲り
家を出た。
後継を望む弟

自分の頭を使って世界中を
股にかけた仕事をしたかった一晃
損得が成り立つ関係だった。

そんな田中が選んだのが
大学時代自由奔放に生きて
仕事をやらせれば誰も足元に
及ばないライオンと、呼ばれた
男、加納桜祐だった。


田中秘書は
後継者と言うしがらみから逃れたのだ
弟には本当に感謝している。

弟に話を通し桜祐を入院させる事に
成功した。

世の中狭いと言うがまさかの
話だ。
田中が頭がキレるのには
納得出来る、子供の頃から厳しく
しつけられ勉強も確りやって
きたのだろう。



そして無事桜祐を入院させて
田中秘書は様子を見に
病院内のコンビニに足を運んだ。

初めは悠里が分からなかったが
店員の声で悠里が誰かを知った。
何故か悠里はメガネ女子で
人を遠ざけていた。


店長の話だと男性とはあまり
喋らず女の子とはお喋りな悠里に
みんな不思議に思っていたとか
この病院の長男をひけらかし
色々と、聞き出した。

店長の彼女は、30歳半ばの
面倒見のいい人で悠里の事を良く
気にかけていたらしい。


「加納さん、おはようございます。」
今日も悠里は桜祐の元に向かう

そんな時間がながれて1ヶ月
桜祐と、悠里は昔のように仲良く
なって来た。

そして・・・

三上さんと、呼んでいた桜祐が
悠里と、呼んだ事に悠里は
びっくりした。


「加納さん、記憶戻った?」


あ‼・・・し、しまったヤバ😫💦
「う、うん(•́ε•̀٥)す、少し‼」


「何処まで?何処まで
もどりました?。」

「悠里が大好きだった所まで」


桜祐は何時にない潤んだ瞳で
悠里を見た。

「加納さん」


「そんな他人みたいな呼び方
駄目じゃない悠里‼」

悠里は泪で目が溢れていた。
拭っても拭っても涙は止まらない

「良かった、良かった。」
を何回も繰り返す悠里に桜祐は
罪悪感を覚えてつい本当の事を
話たくなった。


「悠里実は俺」

=͟͟͞͞( •̀д•́)「おはようございます。」
突然田中秘書が桜祐の話を打ち切る
ように飛び込んで来た。


泣いていた悠里は田中に飛びついて
「田中さん、記憶が記憶が
戻ったんです!桜祐の記憶が
戻ったんです。」

悠里はガシッと、田中秘書に
抱きついた。

「あ・・・のう💦」
コレは不味いですから💦

棒立ちの田中秘書は悠里の甘い
髪の香りにウットリ

『それに鬱は記憶喪失とは
違うんじゃあ?』
悠里は田中にしがみつくように
手を背中に回している

ハッとして田中は桜祐を((😨))見る
ライオンは鬣を震わせながらワナワナと、田中秘書を睨んでいる💦


「悠里様、よ、良かったですね💦
アハハヤバ」
きょつけ━━━━状態

「はい、嬉しくて嬉しくて」

田中秘書は桜祐の眼差し
(▽ω▽)ギラッを気にしつつ

「えっと・・・
ハイ私も喜ばしいです。」
コマッタコマッタ💦ヤバ


(▽ω▽)ギラッ


・・・💦

「アアッそ、そうだ
悠里様、そろそろ
お時間では?」


「ああっほんとだ
‼加納さん明日は
お休みですから1日御世話
できます。」

田中から離れ振り返った悠里は
嬉しそうに桜祐を見た。

「悠里、前みたいに桜祐と、
呼んではくれないのか?」


「えっ・・とハイ。
桜祐さん。」


「桜祐さん?さん?って何?」
桜祐は不満たっぷりな顔をして
悠里をみた。





悠里は観念したようにため息を
フウゥゥゥーーーーーーッッ!!!
と吐くと
「わかった、わかった桜祐‼
記憶が戻ったのなら
遠慮しないからね!」

悠里は元気よく
「じゃ行ってきますね、桜祐👋」

桜祐も離れていた時間を埋める様に
「おう👋゛」
と、明るく返事をする。


悠里が出て行ったのを見計らう
ように田中一晃は

「社長、仮病の事、話そうと
しましたね💦
勘弁して下さいよ。
”毒を食らわば皿まで”ですよ。
中途半端はやめて下さい。
ダメですよ!」


「ス、すまん。
つい罪悪感が溢れて来て‼」

「潔癖な悠里さんです
それこそ今迄の努力が無駄に
なります、いよいよ最後の
詰めなのですからね。」


「最後の詰め?」

「明日外出許可が出たと、
言う事で悠里様とお祖母様の
お見舞いに伺いましょう。

お祖母様も退屈されている様で
そろそろ限界だと言われまして
少し早いと思いますが
やりましょう。」

「ああ‼」
桜祐は悠里と、二人っきりで過ごす
つもりでいたのにと残念な気持ちに
なり渋々頷いた。





「何っ!悠里が見つかった?
何処にいる直ぐ会わせろ!」

雪乃の看病に詰め付き添い
を頑張る加納一大は90近い。
案外愛妻家だった事にビックリ‼。
毎日欠かさず雪乃の世話に没頭する。

雪乃はこの加納一大の身体が
心配で落ち着かなかった。
歳をとって尚更相手を思いやる
ところは見習いたいものだ。


田中秘書は
悠里と、桜祐を都内の病院へと
案内する。




「ここです。
お見舞いの時間は10分です。
某ウイルスの為 2人以上の面会は
禁止されています。
雪乃様も直ぐ退院されますので
手短にお願いしますね。」


「はい。
分かりました。」


”コンコン”

「はい。
どうぞ‼」


「雪乃はパジャマ姿で
ベッドに寝ころんで煎餅をバリバリと食べていた。」
パパパッと枕の下に隠すとお茶を1口飲む。

「お祖母様、心配かけて
すみません。」
桜祐は雪乃が自分と同じ仮病だと
知りつつもこんな事をさせて
申し訳なく思ってしまう。


「ああ、桜祐気分はいいの?
ゲホゲホ」
煎餅が喉に詰まりそうになる。

少し力の無い声で呟く様に雪乃は
頭を上げた。

「お祖母様、お加減はいかがですか?」
悠里が桜祐の後ろから顔を出す。


「まあっ☀
悠里じゃないの!
桜祐と、結婚するのね。
良かった良かった‼
これで安心してあの世に行けるワ︎💕︎」


「えっ( 'ロ'!!!結婚?」
悠里は突然の雪乃の言葉にビックリ
雪乃もこのまま丸め込んで
一気に畳み込む作戦だ‼


「いえっ違💦ぃ」


「桜祐おめでとう。

ああ、私病院に寝てる場合じゃ
無いわ‼」


「え、ええ━━━━━━っ‼
お祖母様寝てませんとダメですよ‼
今咳をされていたではありませんか!」

悠里の話は聞かないふりで

「桜祐、桜祐忙しくなるわね。
お式はウイルスの収まった
頃にして構わないけど

お写真は撮りましょう。
曾孫も早く抱きたいわ!
あ━━━━━楽しみ。」


「お祖母様落ち着いて下さい。」
悠里が雪乃の背中を撫でる

=͟͟͞͞( •̀д•́)「はい10分です。
お見舞い時間は終わりです。」

田中秘書は、雪乃が悠里を
丸め込んだのを
確認した後悠里と、桜祐を
連れだした。


田中秘書は広い公園迄
2人を案内すると

「加納様も、雪乃様ももう
お年でいらっしゃいます。
あとはお2人で話し合ってください。」

田中秘書はポンと、二人を
下ろして

「私は社へ戻ります。
朗報をお待ちしております。」

そう言うと桜祐に財布を渡して
去って行った。



近くのパーキングに車を止め
田中は、二人の様子を、木の陰から見守っていた。

『社長、私が出来るのはここまで
です。』



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