毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


【舞side】


「───ということがあって、明日なんか来なければいいと思ってる」


およそ二ヶ月ぶりに会ったかれんちゃんは、私の部屋のローテーブルに顔を伏せて現実逃避をしていた。


話を聞いたところ、少し会わない間に随分と濃厚な高校生活を送っていたみたい。


中学が同じだったという他校の女子はなんとも余計なことをしてくれたと思うけど、そのおかげでここまで感情が揺れているかれんちゃんを久しぶりに見られたんだから、ちょっとだけ感謝だ。

ほんとにちょっと、赤ちゃんの爪の先くらいだよ。

かれんちゃんを泣かせたのは許さないんだから!


「"明日が来なければいい"なんて言いながら、実はデートが楽しみなんでしょう?」


そう揶揄いつつ、かれんちゃんの手土産である苺のショートケーキをぱくりと一口頬張る。

生クリームの甘さがじんわりと口の中で広がって頬が緩んだところで、ガバッと状態を起こしたかれんちゃんが真顔で私を見つめた。


「違う」

「照れなくてもいいのに」

「照れてない」

「じゃあどうして否定するの?」


答えが分かりきっているけど、あえて問いを投げてみる。


受け入れてしまえば楽なのにそれをしないのは、かれんちゃんの過去がトラウマになっちゃってるからなんだろうな……。


私には水上くんとやらが好きで好きでたまらないって聞こえるんだけどね。

私と遊んでるときはたまに顔が緩むことがあるけど……誰かの話をしていて表情が和らいだり、声が丸く優しくなったりすることなんてなかったから。


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