雲居の神子たち
一緒に探すといってもみなそれぞれ思いはある。

2人には言えないが、俺は稲早の気配を探しながら街の隅々まで回ってみようと思っている。
宇龍にも考えはあるだろうが、男同士でもあるし、大きな意味でも主従関係というか身分の違いのようなものから俺の意見に従ってくれると高をくくっていた。
しかし、八雲が加わればそうはいかない。
何しろ気分屋だし、根拠のない感情論で突っ走るし、何よりも道理が通らない。
もちろんその野生の感がかなりの高確率でいい結果をもたらすのだが・・・
今回ばかりはそんな不確かなものに頼るわけにはいかない。

「何よ、須佐は不満そうね」
「え、いや・・・」

長い付き合いの八雲には俺の思いなんて筒抜けらしい。

はあぁー。
どうしたものか。

「いいわよ、私は私で探すから二手に分かれましょ」
「待て、八雲。」

こんな早朝に女の子一人になんてできるものか。
さすがに俺も止めに入った。

だが、八雲が聞くはずもなく、スタスタと通りを歩きだす。

「待てって」

振り返ることも、足を止めることも、返事をすることもなく八雲の背中が小さくなっていく。

本当に困った。
これでは稲早を探すどころではない。

「とりあえず、私が参ります」
俺も困惑を察知して宇龍が動いた。

「あぁ、すまない」

今はこれ以外に方法がない。
とにかく今は稲早を探すのが先決だ。

ここで落ち合おうと約束をして、俺は宇龍に八雲を任せることにした。
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