雲居の神子たち
トントントン。
石見が3度裏木戸を叩いた。

しばらくして扉が開けられ、現れたのは若い男性。
白蓮を要求してきた男は50代と聞いていたからこの人は別人。
きっと身の回りの世話をする人たちもいるのだろう。
こんな様子で私が1人になるタイミングなんてあるのだろうかと不安になった。

「どうぞ」
青年は私が中に入るようにと促す。

石見は何も言わなかった。
どうやら石見がついてこれるのはここまでで、ここから先は私1人で行くしかないらしい。

チラリと石見を振り返り私は青年に続いて庭へと入って行く。

白蓮の家を出る時、尊は「必ず見守っているから、1人じゃないから安心しろ」と言ってくれた。
今は1人で心細いけれどその言葉を信じるしかない。

時々歩が遅くなる私を青年が何度か振り返りながら建物の方へと進んでいく。

「参りましょう、旦那様がお待ちです」
私のためらいを感じとって青年が声をかけた。

私は返事をすることもなくゆっくりと足を進めた。
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