雲居の神子たち
痛みに襲われもがき苦しむ私の腕から、幾筋もの血液が流れ落ちる。
そのしずくは床に落ちる前にガラスの容器へと入っていく。

「なんて美しいんだろうねえ」

ろうそくの光を反射して光輝く液体。
確かに自分のものとは思えないほど美しい。

「さあ、もういいだろう」

女がナイフを抜き傷口に手を当てる。
すると、

嘘。

先ほどまでの痛みが途端に消えた。
そればかりではなく、傷跡も傷口もわからないほど、元通りの腕に戻った。

――私は殺されるの?

初めて、女に向けて念を送った。

先ほど味わった痛みをこの先も与え続けられるくらいなら、いっそ命を奪われた方が楽かもしれない。でも、できることなら死にたくはない。
そんな思いをぶつけた。

「おとなしくさえしてくれていれば、殺しはしない。ただ、」

――ただ?

「私は魔の世界に生きる者だ。その私と共に生きることが、神子様にできればだがね」


それは・・・
神子として生きてきた私にはできない相談。
それは神様を裏切ることだから。
でも、そうすると、私は殺されてしまう。
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