江藤くんはループしがち
あたしはコンコンと机の上をノックして、江藤君に気づいてもらった。


「なに?」


肩耳だけイヤホンをはずした江藤君が聞いてくる。


「あのさ、江藤君のせいでループしてない?」


単刀直入に聞いた。


先生から江藤君が死んだと聞いた後ループしたのだ。


江藤君がなにか関係していることは間違いないと思っていた。


「ループ?」


江藤君は目を丸くし、そして瞬きをしてあたしを見る。


「そうだよ。2月8日から2月3日に戻してるよね?」


あたしは他の生徒たちに聞こえないよう、できるだけ小さな声で言った。


「2月8日って? 今日はまだ2月3日だろ?」


江藤君はそう言っておかしそうに笑う。


「だから、江藤君が時間を戻してるんでしょう?」


食い下がって同じ質問をすると、今度は戸惑った表情を浮かべた。


「ごめん、時間を戻すって何? 漫画の話?」


首をかしげている江藤君が嘘をついているようには見えなかった。


「まさか江藤君、自分で気がついてないの?」


「気がついてないってなにが?」


江藤君に質問すればするほど、本人は困り顔になる。


江藤君は本当になにも気がついてないんだ!


そう理解してあたしは呆れたため息を吐き出した。
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