カウントダウン
「ねぇ、雄太。

雄太はさ、呪いってあると思う?」


「呪い?

何だよ、急に」


「貴史と美保子が立て続けに死んで……、その二人が死んだ理由が忍の呪いだって言われているでしょ。

貴史も美保子も忍の呪いを口にしていたし……。

だから、私、本当に忍の呪いってあるのかなぁって……」


私が真剣に言ったその言葉を聞いて、電話の向こう側にいる雄太は笑っていた。


そして雄太は私をからかうようにこう言ってきた。


「愛美は忍の呪いを気にしてるの?

そんなのないって。

貴史と美保子が死んだのは事故死だよ」


雄太はいつも楽観的で明るい性格だ。


そんな雄太と話していると、いつでも楽しい気持ちになってくる。


でも今だけは忍の呪いのことを一緒に真剣に考えて欲しかった。


もしかしたら、忍に呪われているかもしれないから。


今日中に忍の呪いで死んでしまうかもしれないから。


私は再び頭をもたげてきた不安の中で、少しでも不安をなくしたくて雄太にこう言った。


「今さ、うちの親が二人とも仕事でいないから遊びにこない?

私、一人で暇なんだ……」


私がそう言うと、雄太の明るく弾んだ声が返ってきた。


「行く、行く!

すぐに出かける用意して、愛美の家に行くからさ」


私は雄太のその声にほっとしていた。


雄太がいればもしものときに私を助けてくれるし、安心できる。


こんな不安な気持ちで誰もいない部屋にいるのは怖いから……。


「じゃ、待ってるね。

すぐ来てよ!」


「わかった。

じゃ、またな」


雄太はそう言って電話を切った。


私はふうと息を吐き、雄太に早く来て欲しいといつも以上に思っていた。
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