都合のいいふたり
涼介との同居生活が始まった半年前、私には付き合っている人がいた。仕事関係で仲良くなり、付き合い始めた後に、彼に奥さんと子供がいることを知るという、よくある不倫のパターンだった。

すぐに別れようと思いながらもズルズルと関係を続けていた。

その彼ですら、この家に招き入れたことはなかった。

これからも住み続けるであろうこの家に、必ず終わりが来ると分かっている恋人の痕跡を残したくなかったからだ。

それなのに涼介はほとんど無理矢理に、その境界線を思わぬところから越えて来た。

これまで同居や同棲なんてしたことはない。
10年間、ずっと独りで暮らして来た。

私は同居を始めるに当たり、最近よくあるシェアハウスの様に、ルールを決めることにした。
たとえ短い期間でも一緒に住めば、些細なことで関係が悪くなることだってある。

私は、友達としての涼介を失いたくなかった。

そのためにもルールは重要だ。
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