都合のいいふたり
俺達は地下に降りて、角にあるカフェに入った。
あゆは、お腹も空いてると言って、パンケーキも一緒に注文した。

それを美味しそうに食べるあゆを見て、俺も少しは落ち着いて来た。
でも、それを後で激しく後悔する事になった。

俺達がカフェから出てエスカレーターに向かうため、食品売り場を歩いていると、前からあいつが歩いて来た。

今度は奥さんと小さな娘も一緒だった。

あゆの方を見ると、さっきより辛そうな顔をしている。
あいつも驚いた顔をして、俺達から視線を逸らした。流石に、家族の前であゆには話しかけられない。逆にこっちから何か言えば、家族崩壊の危機にさえなるかもしれないのだから。

あゆはあんなに苦しんだのに、お前だけが幸せそうにしやがって、絶対許さない。

その時、あゆが俺の腕を抑えるように掴んでいるのに気付いた。

俺はグッと堪えた。
もっと早く、このビルを出ていれば、あゆにこんな辛そうな顔をさせずに済んだのに。

その後、家に帰るまであゆは一言も話すことはなかった。あゆの心が閉ざされていく・・・。
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