熱い熱がたまる
9
✴︎
貴文が出てきたとき、舞香は椅子に座っていた。
貴文の髪が濡れている。
「あの⋯⋯」
なんか、つまったみたいに、声が出しにくい
「えっと⋯⋯ 」
手を組んで。ぎゅっぎゅっ、とした。
「お腹空きません? なんか、ルームサービス⋯⋯ 」
と言っていたら、貴文がなんとなく複雑そうにふっと笑った。
「お前のそれ、くせ? 」
「えっ? 」
「手をぎゅっぎゅって」
「あっ」
そう言えば。
舞香は困ったり、緊張するとこんな風に手を組んで、マッサージみたいにして、血を巡らそうとしてるかも、と気がついた。
「ほんとですね、自分ではあまり気が付かなかった」
と恥ずかしそうに笑って、
「北川さん、よく見てるんですねー」
と何気なくにこにこと貴文を見た。
貴文は笑ってなかった。
じっと舞香を見ていた。
視線が絡んで、
貴文が口を歪めた。
歯がギリッと音を立てた。
「見てるよ」
「えつ? 」
「熱がたまるんだ。
観戦した後、やたらとシたくなる。
わかるだろ? 」
「⋯⋯ 」
急に部屋の濃度があがったような気がした。
濃い、熱い。
息の詰まりそうな空気に飲まれる。
この熱がそうなのかな?
わかんないよ。
熱い熱いもどかしさ?
体中の熱が行き場がない、。
熱くて奥底から何かユラユラする。
何かが足りなくて、欲しいのかな、わからないけど。
(私、こんなことするようなタイプじゃないと思ってた)
付き合ってもいない人と2人きりになったり。
なのに、今までで一番安心してたり。
こんな急な熱病にかかったみたいに、おかしくなったり。
もちろん現実も忘れてない。
でも、もう、今、この状態は全然現実じゃない。
それどころか、自分ですらないみたいに。
まるで他人の人生になってしまったような、
って、そんな、非現実感で、もう引き返せない現実がはじまってるんじゃないの。
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貴文が出てきたとき、舞香は椅子に座っていた。
貴文の髪が濡れている。
「あの⋯⋯」
なんか、つまったみたいに、声が出しにくい
「えっと⋯⋯ 」
手を組んで。ぎゅっぎゅっ、とした。
「お腹空きません? なんか、ルームサービス⋯⋯ 」
と言っていたら、貴文がなんとなく複雑そうにふっと笑った。
「お前のそれ、くせ? 」
「えっ? 」
「手をぎゅっぎゅって」
「あっ」
そう言えば。
舞香は困ったり、緊張するとこんな風に手を組んで、マッサージみたいにして、血を巡らそうとしてるかも、と気がついた。
「ほんとですね、自分ではあまり気が付かなかった」
と恥ずかしそうに笑って、
「北川さん、よく見てるんですねー」
と何気なくにこにこと貴文を見た。
貴文は笑ってなかった。
じっと舞香を見ていた。
視線が絡んで、
貴文が口を歪めた。
歯がギリッと音を立てた。
「見てるよ」
「えつ? 」
「熱がたまるんだ。
観戦した後、やたらとシたくなる。
わかるだろ? 」
「⋯⋯ 」
急に部屋の濃度があがったような気がした。
濃い、熱い。
息の詰まりそうな空気に飲まれる。
この熱がそうなのかな?
わかんないよ。
熱い熱いもどかしさ?
体中の熱が行き場がない、。
熱くて奥底から何かユラユラする。
何かが足りなくて、欲しいのかな、わからないけど。
(私、こんなことするようなタイプじゃないと思ってた)
付き合ってもいない人と2人きりになったり。
なのに、今までで一番安心してたり。
こんな急な熱病にかかったみたいに、おかしくなったり。
もちろん現実も忘れてない。
でも、もう、今、この状態は全然現実じゃない。
それどころか、自分ですらないみたいに。
まるで他人の人生になってしまったような、
って、そんな、非現実感で、もう引き返せない現実がはじまってるんじゃないの。