運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~
その時、ホームに電車が入るアナウンスが鳴った。

少し体から力が抜ける。
電車に乗り込めば二度と会うことはないだろう。

「綾乃」
もう一度名前を呼ばれて、最後だからと哲史の方を見た。

「ごめん」
「・・・」
「ごめんな。」
哲史は眉間にしわを寄せながら、人目も気にせず頭を下げる。
目の前に立つ綾乃に深く深く頭を下げる。

「すまなかった。」と。
「やめて、頭あげて。」
今更謝らないで、余計にみじめな気持ちにさせないでと願いながら綾乃は哲史の方に少し近づいた。
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