運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~
「痩せたな」
何を言われても言葉を返せない。
「出張でこっちに来てたんだ。たまたま。」
「・・・そう」
やっと声が出せた。

「・・・」
哲史も何をいったらいいかわからないらしい。
「綾乃」
その声に名前を呼ばれるだけで、過去があふれ出す。

両親が亡くなった時も隣にいてくれた。
『俺がいるから大丈夫』と肩を抱いてくれた。

でもあの時だって、浮気相手の親友は葬儀に参列していた。
自分の気づかないところで目と目をあわせていたのかもしれない。
会っていたかもしれない。

想像するだけで吐き気がしてくる。
< 64 / 349 >

この作品をシェア

pagetop