愛しても、いいですか
「…本当に慎太郎くんと付き合うの?」

その真剣で情熱的な眼差しに思わず目を逸らしたくなったけど、何とか堪えてはい、とだけ答えた。

「…そっか…おめでとう。沙耶香ちゃんの初恋が実ったんだね」

私の目を見つめたまま、

「今の沙耶香ちゃんなら、きっともう大丈夫だよ」

大石さんが切なそうに、でも優しくそんなことを言うから、心臓がきゅーっとなった。

そして私の肩を掴んでいた手を離して、

「突然呼び出してごめんね。全然連絡がつかなくて、心配だったんだ。家まで行ったり電話やLINE鬼のようにしたり…俺、沙耶香ちゃんのストーカーになった気分だったよ」

と苦笑する。

「…心配掛けてごめんなさい…」

素直にそう謝ると、沙耶香ちゃんが幸せならそれでいい、そう言って大石さんはこちらの胸が締め付けられそうになるくらいの切ない顔で微笑んだ。

…どうしてそんな顔で笑うの…?

「…もう業務に戻っていいよ」

そう言うのと同時に、桶川、とドア横に立つ秘書の人に目配せし、その桶川さんはスッとドアを開けてどうぞ、と私の退出を促した。
もう何も言うことは出来ず、失礼します、そう一礼して私は副社長室を後にした。
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