罰恋リフレイン
香菜に一緒に来てもらえばよかったな……。
周りの大学生はキラキラして見える。料理の世界に進もうと決めたのは自分だけど、大学生活も送ってみたかったなと思う。
蒼くんのステージまではまだ少し時間があるから先にトイレに行った。広いトイレの洗面台の前には数人の女の子がメイクを直していて、蒼くんと同じ赤と黒の衣装を着ている。彼女たちはこの後蒼くんと共にステージで踊るのだろう。
広いトイレで他の女性が何人かいても衣装を着た彼女たちの声はよく響いた。
すぐ横で手を洗って私も化粧を直していると自分が地味に思えてくる。
今日のために気合を入れたつもりだけれど、横にいる女の子たちと比べてしまう。濃い化粧のせいもあるけれど彼女たちはとても綺麗で自信に満ち溢れているように見える。
蒼くんのすぐそばにはたくさんの魅力的な女の子がいるのかと思うと気持ちが落ち込む。今の私は蒼くんに相応しい彼女になれているのだろうか。
「さっき私の彼氏が体育館に入ったって連絡来た」
「彼氏がいる子が羨ましいよ。そう言えばさっき夏城くんが女の子と歩いてたんだけど、あれって彼女かな?」
「マジ? そんな話聞いたことなかったよ」
私の話になったことに緊張してくる。話題にしている彼女がすぐ横にいるなんて思ってもいないのだろう。
「あー、多分それ彼女じゃないよ。高校の友達だって」
「え、友達?」
「さっき私も同じこと夏城くんに聞いたの。そうしたら友達なんだって」
思わず動揺して口紅が唇の端からはみ出してしまった。
蒼くんは私のことを『友達』と紹介しているのか。
「女の子を一人呼んでも、関係は友達ねぇ」
「夏城くんってちょっとミステリアスだよね。彼女じゃないならチャンスあるかもー」