罰恋リフレイン

「嘘じゃないよ。肝試しの時に近くにいた人はみんな夏城くんが罰ゲームで告白したって知ってる。まさか日野さんが本気にするなんて思わなかったけど。夏城くんも戸惑ったからみんなに黙ってたんじゃない?」

「やめて……」

「日野さんはマンガだけに夢中になってればいいじゃん。二次元に恋してれば誰にも迷惑かけないよ? まあ見てる方は気持ち悪いと思うけど」

「もうやめて……」

私の好きなものを否定しないで。

これ以上氷室さんの言葉を聞きたくなくて両手で耳を塞いだ。それでも氷室さんや同級生のバカにする笑い声は小さくても聞こえる。
耐えられなくなった私は氷室さんから逃げたくて走った。体育館からどんどん離れる。

人混みに紛れて氷室さんから離れたことを確認すると空いたベンチに座った。

氷室さんの話は本当のこと? 蒼くんは私のことを好きでも何でもなかった? だから普通の彼氏彼女みたいにデートもしてくれなかったし、素っ気なかったんだ……。誕生日も記念日も無視であの夜の告白から今日までのことはずっと嘘……。私はみんなに笑われていた……。

付き合ってほしいとは言われたけれど、私は一度も蒼くんから好きだとは言われたことがなかった。

この事実に気付いてしまったら涙が止まらなくなった。
私はもう蒼くんの彼女ではいられない。元々蒼くんは私のことを彼女だなんて思っていなかったんだ。

カバンからスマートフォンを取り出してLINEを送った。

『帰ります。今までごめんなさい』

蒼くんのステージはあと数分で始まる。このメッセージを彼が読むころには私は電車に乗っている。

ハンカチで涙を拭うと正門まで歩き出した。



< 47 / 105 >

この作品をシェア

pagetop