罰恋リフレイン

ならば翔くんは蒼くんと氷室さんのことを何か知っているかもしれない。もしかしたら全部を知っていてもおかしくない。
そうだったら困るな。香菜の旦那さんなのだから嫌いになりたくないのに。

「あのさ、翔くんから何か聞いてる?」

「何かって?」

「蒼くんとのことで……」

「え、何も……夏城くんがまた薫に何かしてきたの?」

香菜の様子では本当に何も知らないようだ。翔くんも知らないのか、香菜には何も言っていないのか。

「あのね……また付き合いたいって言われたの」

「は!?」

香菜の驚いた大きな声に思わずスマートフォンを耳から離した。

「二次会の帰りに話しかけられて……」

「だから夏城くんを招待したくなかったのに……」

香菜は「翔のバカ」と呟いた。

「それで、一応やり直すことにした」

香菜が息を呑んだのが分かったけれど「そっか」と否定も肯定もしなかった。
声だけじゃ香菜の反応が分からない。だから私も『好きなふりをして傷つけて振る』なんて思っていることを香菜に打ち明けられなかった。
反対はしないだろうけど、きっと蒼くんと距離を置いた方がいいって言われることは分かっていたから。

香菜は私が罰ゲームの対象にされたことを一緒に怒ってくれたけれど、蒼くんのことをどれだけ恨んでいるかを理解はしていないだろう。

やられたからやり返すなんて子供みたいだと分かっている。でも今更気持ちの整理ができない。意地を張るのをやめられない。










「薫に言われてた食材は全部買ったつもりだけど、買い忘れあったら言ってね。今すぐ買いに行くから」

蒼くんの冷蔵庫は食材が詰まっている。あらかじめ私が買っておいてくれたら助かると言った物は全て揃っている。

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