罰恋リフレイン
Freeze
◇◇◇◇◇



突然現れた紗枝に動揺した薫が外に飛び出してしまった。訳が分からないままに紗枝を玄関に残して薫を追った。
必死で腕を掴むと振り払おうと抵抗されたから絶対に放すまいと思わず力を込める。

「私のこと好きでも何でもないでしょ」

思いがけない言葉に息を呑んだ。その言葉が頭に染みこむまでの一瞬が数秒にも数分にも感じられた。

薫のことを好きじゃない? 何を言っているんだ? 頭の中は薫のことでいっぱいなのに。

怒っているような悲しんでいるような、複雑な表情の薫を見るのは6年ぶりだ。学園祭の時に別れようと言われた時と同じ顔をしている。

「罰ゲームを本気にした私がそんなに面白かった? それなのにまた付き合おうって言ってくるとか酷いよね」

「っ……」

やっぱりまだ薫は吹っ切れたわけじゃなかった。俺の前では気にしていないふりをしながら心はずっと傷ついていた。

「嘘の告白はもうこりごり。香菜と翔くんの式で追いかけてきてくれた時、そんなことじゃないかなって思ったんだ」

眩暈がするほどの衝撃を受けた。俺の気持ちを疑っていたことは薄々気づいていたけれど、今も信じてくれなかったことが悲しくて悔しい。
どうか信じてほしい。薫を想う気持ちは嘘じゃない。

「薫の被害妄想だよ!」

思わず怒鳴った言葉に薫の目が潤んだ気がしたから慌てて「とにかく戻って」と薫の腕を引いてマンションまで連れ戻そうとした。

「あのさ、いい加減気付いてよ。蒼くんも私の気持ちを本気だなんて思ってないでしょ?」

掴んだ腕の力が抜けていく。

「私蒼くんのこと好きでも何でもないから。どうせ蒼くんも私のこと本気なんて嘘でしょ? お互い様でお相子だね」

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