罰恋リフレイン

「だ……大丈夫?」

肩の何かを必死で払う俺に日野は心配そうな顔を向ける。

「夏城アウトー!」

木の影から実行委員の男子が出てきた。

「ぜってー夏城に声出させようって悪足掻きした甲斐があった!」

男子は手に釣竿を持っている。糸の先には小さいボールがついている。

虫じゃねーのかよ……叫び損だ……。

「どんまい! 叫んだのはお前だけ!」

男子は日野を見てニヤついた。

落ち込みながらホテルの駐車場に戻ると罰ゲームを企画した同級生たちが待っている。俺は日野から離れて面白そうに笑っている同級生のもとに行く。

「蒼、最後に叫ぶなんてアホだなー」

「うるせーよ……」

「告白しろよな。ペアは日野だっけ?」

「なあ、やっぱ無しにしない?」

翔も盛り上がりを止めようとする。けれど一度決まったことだろとみんな聞く耳を持たない。
俺は溜め息をつくと「やるけど覗くなよ」と低い声で言う。

「何で? 見れなきゃ面白くねーだろ?」

「罰ゲームで告白なんて日野はいい気しないだろ? だから覗くなよ」

文句を言う同級生に何度も念を押して日野を探した。

香菜と一緒にいる日野を見つけると戸惑いながらも「ちょっといい?」と駐車場から連れ出してホテルの裏に移動した。

「どうしたの?」

何も知らない日野は突然連れ出されて緊張しているのか目を合わせようとしない。

「あのさ……」

なかなか言い出せない。
だって日野のことは何とも思っていない。何かしらの感情を抱くほど関わったこともない。
こんなことをしていいのだろうか。ゲームで嘘の気持ちを伝えるなんて。

「何もないなら戻りたいんだけど……」

足を踏み出しそうな日野に「付き合ってほしい……」と小さく呟いた。

「え?」

「あの……俺、と……付き合って……ください……」

歯切れの悪い言葉に日野が目を見開く。

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