エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「それじゃあ、中央総合病院に器の回収に行ってくるね」
近衛先生に出前を届けた翌日、私は再び中央総合病院の外科医局に向かった。
時刻は昼の三時過ぎ。
野原食堂は忙しいランチタイムが終わって、夕方からの営業に向けて準備中の時間だ。
だけど病院に向かう足取りは重い。
……医局に行くの、昨日よりも緊張しちゃうな。
近衛先生の寝顔を盗み見したことは誰にも見られてないはずだけど、もし本人と顔を合わせたらちょっと気まずい気持ちになるだろう。
あれ……?
と、大通りを渡って病院の通用口の前に着いたところで、パジャマにコートを羽織ったおじいさんとすれ違った。
なんで、パジャマにコートなんて……。
違和感を覚えたけれど、見ず知らずの人に声をかけるのも気が引けて動けなかった。
……まぁ、いっか。
お店に戻るのが遅れると、またお父さんに文句を言われるだろうし。
とにかく今は、昨日の器を回収してこなきゃ。
結局私は、おじいさんを追いかけることはせず、再び病院へと足を向けた。