エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
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「こんにちはー、野原食堂です。器の回収に来ました」
昼間の病院は人手が多く、賑やかだ。昨夜の静けさが、嘘のよう。
「あ、野原食堂さん? あれ、今日はいつものシャキシャキしたお兄さんじゃないんだ?」
「はい。兄は今、お店をお休みさせていただいておりまして」
「へぇ、彼、妹さんがいたのかぁ。野原食堂さんには、いつもお世話になってます。あ、器はこれね!」
対応してくれたのは、四十代半ばくらいの優しそうな男の先生だった。
チラリと見えた医局内には、今日は近衛先生の姿は見当たらない。
「それと、昨日近衛が支払いできなかったっていう代金は、こっちの封筒に入ってます。ごめんねー、お代をその場で払えなかったみたいで」
「あ、いえ、大丈夫です。中央総合病院さんには、いつもご贔屓にしていただいていますし」
やっぱり、今日は近衛先生はいないみたいだ。
顔を合わせずに済んでホッとしたような、会えなくて少し残念なような複雑な気持ちになる。