エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「いらっしゃいませー。おひとり様ですか?」
と、お母さんがお客さんを迎える声で我に返った私は、弾かれたように顔を上げた。
「いらっしゃいま――」
思わず言葉が止まる。
次の瞬間、目に飛び込んできた人の姿に、私は驚いて目を見張った。
う、嘘でしょ……。なんで?
「あれー、近衛先生じゃないっすか! お店に来てくれるの初めてですよね⁉」
カウンター越しに元気よく声をかけたのはタツ兄ちゃんだった。
タツ兄ちゃんはずっと前から医局に配達に行っていたから、近衛先生とも顔見知りなのだろう。
「今日はどうしたんですか!? もしかして、仕事終わりです?」
「ああ、ちょうど先ほど終わったところで……」
そこまで言って言葉を止めた近衛先生は、カウンターの前に立っていた私を見ると小さく笑った。
「今日は、いつも来てもらってばかりだったから、自分から会いに来た」
「……っ」
ドキン、と心臓が跳ねたのは、そう言った近衛先生の目が、とても真っすぐだったからだ。