エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「会いに来たって、親父の特製チャーハンにっすか? ハハッ。近衛先生、特製チャーハン好きだもんなぁ」
軽口を叩くタツ兄ちゃんに案内されて、近衛先生は店の一番奥にあるふたりがけの席に腰を下ろした。
目の前を近衛先生が通り過ぎた瞬間、まるでスローモーションを見ているみたいで、私は置物みたいに固まっていた。
……嘘みたい。近衛先生がうちの店にいることが信じられなくて、夢でも見ているんじゃないかと思った。
「ほら、百合。ボーッとしてないで、お冷や持っていって!」
「あ……っ、は、はいっ」
ポン!とお母さんに背中を叩かれて、私はようやく我に返った。
慌ててお冷やをお盆にのせると、近衛先生の待つ席まで向かう。
「いらっしゃいませ……」
テーブルの上にお冷を置く手も、挨拶をした声も震えていた。
次の瞬間、伏せられていた目がゆっくりと私を仰ぐ。
目と目が合った瞬間、頬が紅潮し、全身の血液が沸騰したように身体が熱くなった。
「今日はラーメンを頼もうかな」
「ラーメンですか……?」
「ああ。せっかくだし、普段は頼めないものを頼もうと思って」
言いながら近衛先生はジッと私の目を見つめる。
そういえば……前に、タツ兄ちゃんから聞いたことがある。
お医者さんが出前をとるときには、ラーメン等の麺類は頼まないんだって。
理由は、急患や緊急手術等が入ってすぐに食べられなかった場合、麺が伸びて残念なことになってしまうということが、よくあるからということだ。