クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「すっごいイケメンだなあ。業者さんかい?」

 湯川さんは遥人さんを見上げて目を丸くしている。スーツを着ているから仕事の関係者と推測されたのだろう。

「違いますよ。この方は」

「ああ、分かった。例の彼氏だろう」

 心臓がドクンと嫌な音を立てた。

 以前皆さんとの会話で恋の話題が上がった。恋人はいるのかと集中攻撃を受けて、仕方なく最近お付き合いを始めた男性がいると、打ち明けたのだけれど。

 交際期間僅か三ヶ月。

 別れたと伝えたら、ひとりの人間と長く過ごせない、根気のない女だと思われるだろうか。

「……違いますよ。彼は、宝生さんのお孫さんです」

「宝生さんって、最近入った人か。へえ~こんなイケメンな孫がいるなんて、鼻が高いだろうねえ」

 心からそう思っているのだろう。湯川さんは感嘆の息を漏らしている。

「祖母がお世話になっております。まだ馴染めずに寂しい思いをしているはずなので、よくして頂けると幸いです」

 長身の遥人さんが、丁寧にお辞儀をする姿をポカンと見つめた。

 スーツ姿だし、必要以上にかしこまった口調にものすごく違和感を覚えたのだ。
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