クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
 湯川さんもそうだったようで、一拍置いて大きな笑い声が飛ぶ。

「あっはっは! 兄ちゃん、かしこまりすぎだよ! ここはそういう感じじゃないから。皆仲よくしているし、変な奴もいないし、安心していいよ」

 湯川さんは入居されて四年になる。最初から元気な人だったけれど、それでも人知れず悩みは抱えていたはずだ。

 声音に思いやりが滲んでいて、遥人さんの不安を取り除こうとしているのが分かった。

 周りにいる人間まで晴れやかな気持ちにさせる、こういう底抜けに明るい人には敵わない。

「これからゆっくりと、ここに慣れていただけたらいいですね」

 湯川さんにつられて私もふふっと笑う。

 遥人さんは何故か驚いたように瞬きをして、それから目元を緩めた。

「ありがとう。よろしくお願いします」

「いえいえ。こちらこそよろしくお願いします」

 私たちがそんなやり取りをしているところへ、ようやくスタッフのひとりが湯川さんを迎えに来る。
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