クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
 のたうち回りたいくらいの苦痛に耐えようと歯を食いしばる。

 自分の意思とは関係なく涙が溢れてきた。

「白峰さん!」

 私の名前を呼ぶ男性の声に、なんとか瞼を持ち上げる。

「え、は、遥人さん?」

 どうして彼がここに。

 そこで遥人さんの背に隠れて、こちらを見つめる子供の存在に気づく。

 結愛ちゃんだ。

 そっか。さっきぶつかりそうになったのは結愛ちゃんだったんだ。

「……っい」

 結愛ちゃんのフォローをしようと起き上がりかけたのだが、右肩を強く打ちつけたせいで力が入らない。じんじんと痺れるような痛みに嫌な予感がした。

 これ、大丈夫なのかな。

 どうにか立ち上がろうと足に力を込めたところで、両肩をがしっと掴まれた。

 驚いて目を見開く。

「怪我しているよね。病院に行こう。タクシーを呼ぶから少しだけ我慢できる?」

 吐息がかかるくらい近い距離で言われて、心臓が壊れそうなくらい鳴った。
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