クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「い、いえ。これから仕事ですし、そんな」

「仕事より自分の身体を優先して」

 落ち着いた声音に含まれる威圧感に、私は口を真っ直ぐに結んだ。

 遥人さん、ちょっと怒っているかも。

 困惑する私を尻目に、遥人さんは手際よくあちこちに電話をかけている。

 おそらく、タクシー会社と私の職場、そして宝生のおばあさまだ。

 遥人さんはスマートフォンをズボンのポケットにしまい、まだ地べたに座ったままの私の前にしゃがみ込む。

「ロイヤルライフには、病院の処置が終わったら、白峰さんから連絡を入れると伝えておいたから。心配しなくていいよ」

「ありがとうございます」

「結愛としっかり手を繋いでいなかった俺が悪い。本当にごめん」

「いいんです。私も曲がり角なのに、スピードを落としていませんでしたから」

 不安げに様子をうかがっている結愛ちゃんに笑いかける。

「結愛ちゃんは怪我しなかった?」

 こくこく、と何度も頷く結愛ちゃん。まだショックが拭えないのだろう。
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