クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
 結愛の母親なので、俺が必要以上に白峰さんへ謝罪すると、彼女の立場が悪くなるという意味か? なんにせよ、このチャンスを棒に振るつもりはない。

「伶香が了承すればいい?」

 前を向きながら尋ねると、「そう、ですね」と歯切れの悪い声がする。

 強引過ぎたか。

 せっかく会話ができていたのに、急に重苦しい雰囲気に包まれる。そうこうしているうちに彼女が住むマンションへ到着した。シフトレバーをパーキングに入れてサイドブレーキをかける。

「もう少しだけ大丈夫?」

 不思議そうに目をぱちくりした白峰さんに、できる限り優しく微笑む。

「伶香に電話するから」

「えっ」

 俺の手の中にあるスマートフォンはすでにコールしていて、すぐに伶香が応答した。ちなみにスピーカーモードにしてある。

『はーい。どうしたの?』

「今回のお詫びに、白峰さんを食事に誘いたいんだ。伶香はどう思う」

『へえ~! いいじゃない! でもどうして私に確認を取るの?』

 隣に視線を流す。白峰さんは瞳を揺らして俺を見つめていた。その表情は、なにかを訴えているようにも見えなくはない。

 そこまで俺と食事に行くのが嫌なのか。
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