クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「こっちの予定は気にしなくていいから。結愛を連れて、このマンションまで迎えに来るよ。時間は、そうだな。十七時でどうかな。あまり結愛を遅くまで連れ回したくはなくてね」

「もちろんです。結愛ちゃん最優先でいきましょう」

「好きなものや、食べたいものはある?」

「好きな食べ物はお寿司ですけど、結愛ちゃんは食べられないですよね」

「結愛も寿司が好きだよ」

 ふたりの好みがすんなり合って驚く。

「そうなんですか?」

「とくに、いくらとエビが好きだな」

 初めて結愛とばあさんの元を訪ねた帰りに、大好きな寿司が食べたいとねだられて、回転寿司に連れて行ったばかりだ。

「それなら金曜日は寿司でいいかな?」

 白峰さんはようやく表情を緩めてふわっと笑った。

 あどけない笑顔が可愛すぎて、このままずっと見ていたくなる。あたり前だがそうはいかないのだけれど。

「疲れているところ引きとめて悪かった。食事、楽しみにしているよ」

「ありがとうございました。それでは、また明日」

 まるで恋人同士のようなやり取りに胸が幸福感で満たされる。俺にもこんな感情があったんだな。

 か弱そうな後ろ姿が見えなくなるまで見送り、俺は満ち足りた気分で車のアクセルを踏んだ。

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