クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
 メッセージを送ったのに返ってきたのは電話で。無視したら今後余計に関係が悪化すると懸念して、応対したのがいけなかった。

 大丈夫だからと何度伝えても、遥人さんは『送る』の一点張り。

 せっかくよくなってきているのに、無理をして悪化したらどうするのかと叱られたくらいだ。

 最後の方は強引にこちらから通話を終わらせた。だからもしかして、今朝も迎えに来るのではないかと内心びくびくしている。

 遠くからこちらに向かって来るバスの車体が視界に入り、肩から力が抜ける。

 これで無事に、バスで出勤できる。

 バスは満員で座れる席はなく、十分間揺られていたら早くも肩が痛み始めた。

 よりによって雨が降るなんてついていない。昨日より肩の痛みがひどいのはきっと雨のせい。

 やっとの思いでロイヤルライフ星が丘に到着し、更衣室で着替えを済ませた頃には私はげっそりしていた。

 それでも業務は待ったなしにやって来る。いつもより長く感じる一日を終えて、ようやく勤務時間が終わろうとしていた頃だった。

「白峰さん」

 廊下を歩いていたら宝生さんに呼び止められる。
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