クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「どうかされましたか?」

「遥人が来ているの。部屋まで付き添ってもらえる?」

 遥人さんが来ている?

 耳を疑ったが、宝生さんの笑顔を見る限り聞き間違えではないだろう。それに今日は土曜日で、遥人さんの仕事はお休み。

 他のスタッフに代わってもらおうか。そうは思ったものの、夕食前の時間帯なので、入浴介助や食事提供の準備で慌ただしい。

 仕方なく笑顔を張りつけて宝生さんに寄り添う。

「今日もこれから、遥人が白峰さんを送り届けるのよね」

 口を挟む暇もなく宝生さんは話を続ける。

「これまで一度も会いに来なかったのに、この一週間は毎日顔を見せてくれて嬉しいの」

 遥人さんは私の送迎のみで終わらず、朝か夕方のどちらかに必ず宝生さんの部屋を訪れていた。

 たとえ五分でも毎日家族と顔を合わせて言葉を交わすのは、ここで暮らしている方々にとってかけがえのない時間だと私にも分かる。
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